子供たちの未来の為に、地球温暖化防止は待ったなしの最重要課題です。
人類は、焼畑による農業の始まりから化学肥料農薬による現代農業に至るまで、この広大な土地の自然生態系の破壊と引き換えに80億人を超える人口の拡大を果たしました。しかし、農業は世界の温室効果ガスの約二割の排出し、子供たちの未来を脅かす存在でもあります。
農地に炭素を固定することが出来るACT農法が世界の国土面積の11.6%を占める農地全体に拡がれば年間14億トンの炭素を固定することが可能となり、世界の二酸化炭素排出量の炭素の約14%相当します。更に、この炭素固定技術は、緑化地や公園等にも使える技術なので、非農耕地にも広がれば世界の温室効果ガス問題の対策は非常に大きく前進します。
また、ACT農法の主役である白トリュフ菌等の菌根菌は、空気中や雨中の窒素を取り込んで大量の菌糸を伸ばしながら、菌糸の細胞の新陳代謝で土中に菌糸タンパク質由来の窒素源を蓄え、菌根菌と共生している植物はその窒素源の恩恵に預かることが出来るので、窒素肥料の投入量が大幅に削減可能となります。窒素肥料は、主原料のアンモニアの合成時に大量の化石資源を使用し、また、土壌に投入した窒素肥料の一部は二酸化炭素の300倍も温室効果が高い亜酸化窒素となって空気中に排出されることから、ACT農法による窒素肥料の使用量削減は、地球温暖化問題の軽減にもつながります。
◎ACT農法の農地への炭素固定の仕組み 森林生態系では、枯葉や枯れ木に含まれている難分解性の繊維質であるリグニンが白色木材腐朽菌によって分解され、これにケイ素やアルミが結合して、腐植という微生物に分解されにくい安定した炭素化合物を産み出します。腐植の約50%は炭素で、数百年は分解されずに土の中に留まることから、ACT農法は、土の中に腐植を作り出すことで、農地に炭素を固定するのです。
また、腐植には、フルボ酸やフミン酸等植物及び植物プランクトンの生育にとって非常に重要な有機酸が含まれているので、牡蠣等を養殖している東北地方の漁業団体の中には、牡蠣のエサとなる植物プランクトンを育むために、腐植の豊かな森林生態系を維持する活動に積極的に取り組んでおられるところもあります。ACT農法が広まることで、沿岸・海洋生態系の炭素固定量の増加も期待されます。
◎腐植の歴史 リグニンで強靭な骨格を作る進化を遂げたシダ植物が30メートルを超える巨木に育った石炭紀には、リグニンを分解する菌がいなかった為シダの遺体は地中に石炭となりましたが、約2億9千年前にリグニンを分解する白色木材腐朽菌の誕生以降は、石炭の替わり腐植が産み出され、腐植の多い地層に世界の穀倉地帯が形成され人類の食を支えてくれています。
しかし、約100年前の緑の革命で化学肥料使用が主流となって以来、土壌から有機質を剥奪する農業が続き、農地に腐植として固定されていた土中炭素が急速に減少し「土が痩せ」て農業生産が不安定になっており、中国政府等は穀倉地帯の腐植の減耗による食料生産の減少を懸念して化学肥料の使用量削減政策を進めています。
腐植は1㎝出来るのに100年かかるといわれる程の長い年月を要し自然林や湿地で作られるので、従来畑の腐植は消耗するのみでしたが、ACT農法は、畑に投入した森林バイオマスを白トリュフ菌等の白色木材腐朽菌が分解し、共生している植物の生育をサポートしながら腐植を作り出すことの出来る技術でもあります。