コラム『自然+α』Ⅰ-①

農業

第一話:植物はなぜ動かない選択をしたのか?

私たちの周りにある植物は、すべてその場から動かずに暮らしています。一方で、動物は自由に移動し、食べ物を探して生きています。なぜ植物は動かないという選択をしたのでしょうか?その答えには、自然界の驚くべき仕組みが隠されています。


光合成という「最強の武器」

植物が動かない理由の一つは、光合成という驚異の仕組みを手に入れたことです。光合成では、太陽の光を使って二酸化炭素と水から自分でエネルギーを作り出します。動物のように食べ物を探しに移動する必要がありません。
「太陽の光さえあれば生きていける」という進化を遂げた植物にとって、動くよりもその場に根を張ることが最も効率的な方法でした。


土壌のパートナー「菌根菌」

光合成だけでは、植物が生きるために必要な栄養すべてを賄うことはできません。「えっ、学校の理科の時間に植物は光合成で育つと習ったけど?」と思われた方、多いのではないでしょうか。森の中の植物の様子を想像してみて下さい。森には杉のような大木以外に、殆どの時を大木の陰で過ごしているイチゴやランのような背丈の低い植物が多く生息しています。寧ろ、太陽の光を四六時中受けられる植物の方が圧倒的に少ないことに気づくでしょう。また、悠久の歴史の中では長期の曇天やそれ以上に植物にとって厳しい気象変動も沢山ありました。光合成だけで悠久の時を生き延びられるほど自然界は優しくないのです。

では、植物は光合成以外に何からエネルギーを貰っていたのか?ここで登場するのが、菌根菌という土壌の微生物です。菌根菌は植物の根に共生し、土壌中にあるリンや窒素などの栄養素を植物が吸収しやすい形に分解します。

さらに、菌根菌は枯葉や植物の遺体を分解し、それを新しい栄養として植物に還元する役割も果たします。これにより、自然界では土壌中の栄養が循環し、植物は常に必要な栄養を得ることができるのです。


動かない選択のメリット

動かないことで、植物は効率的にエネルギーを使い、根を深く張って水や栄養を安定して得ることができます。また、菌根菌というパートナーが栄養の供給をサポートするため、移動する必要がないという大きなメリットがありました。

これが植物が動かない選択をした理由だと考えられています。


次回予告

しかし、現代農業ではこの「動かない植物」の仕組みが壊されつつあります。次回は、植物が動けないことで現代農業が直面している課題についてお話しします。

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